Gilpin Ore Car [O-16.5mm (On30, O16.5)]
ギルピン鉄道の鉱石運搬車です。コロラドにあった2ftゲージの鉱山鉄道で、スイッチバックで標高の高い金鉱山に入り込んでいて、観光鉄道にもなっていました。小型のシェイが活躍していたこともあり、模型の題材にはうってつけの鉄道といえます。この鉄道で活躍した鉱石運搬車が2種類Grandt Lineから発売されています。
これはそのうちのLarge Ore Carですが2ftものなので小さいです。以前に永福町にあったお店で2点手に入れました。
購入後早速一両を組んでいました。台車は別途指定のものがありますが16.5mmで使うのでストックのあるMDC-HOのFox台車をはかせてみました。しかし、塗装仕上げをすることもなく、この状態で箱に乱雑にしまわれてきた結果、先日取り出したときにはブレーキハンドルは紛失し、接着剤のあとが変色していました。十分に良くできた製品なのになぜ放置されてきたのか?それはやはりカプラーの問題です。当鉄道ではナックルカプラーを備えていないと走らせることはほとんどありません。このキットには別売りにもなっているピンリンク式カプラーが付属していたので、これを接着していました。ピンリンク式は取り付け高さが統一されていないので連結して試走させるのに適当な機関車がないと、そのまま隅に追いやられることになってしまいます。
今回、ブレーキハンドルを補修し、もう1台を組んで、ケイディー互換のカプラーを取り付けました。カプラーポケットだけはケイディー製です。
もう一台は同じMDC製ですがアーチバー台車をはかせました。
塗装は缶スプレーの艶消し黒の上に少しマホガニー、さらに艶消しクリアーを軽くかけてからグレーのウェザリングパウダーをすり込みました。
この車両ですが、梁は貫通しておらず斜めの板で支える構造になっています。模型では梁の水平を確かめるのが難しく、わずかに歪みがあるようで組み立て当初は気になっていましたが、使い込んだ実車の写真を見ても歪んでいるようなので納得しています。
箱型機に牽かせてみました。Grandt Line製品は事業が引き継がれていますのでこのキットは今でも入手できます。
なべ倒し [O-scale structures]
なべトロ(転倒するなべを載せたトロッコ)は土木軌道に欠かせない車輛です。実物では手動で倒すシーンを見ますが、模型としては自動転倒の動作を眺めることができます。それも簡単な仕掛けがあれば、なべを走行させるだけで転倒と戻しの操作を手軽に実現することができます。
【市販の転倒装置】
ドイツ型製品にはたいてい動作可能ななべトロが用意されており,Nゲージではミニトリックス.アーノルト,フライシュマンのすべてに転倒装置が用意されています.これをHOナローに利用したレイアウトとしては林伸憲氏の「汽車の来るジャンク置場」(TMS454号,ナローゲージブック1所収)が知られています.
これはフライシュマンNの転倒装置です。カーブした覆いについている斜めの突起が右から進入時の転倒ガイド、線路手前の下からの突起が後退させたときの戻しガイドになります。
フライシュマンNのなべトロです。相当なオーバースケールと思われますが、各社製品とも機能優先で、ほぼ同じ形をしています。軸受の下に突起が出ていて転倒装置を通過する際に車輛ごと転倒しないように抑える構造になっています。
【HOナローの転倒装置】
かつて製作したHOナローレイアウト「からくり鉱業」(TMS’95 10 月606号)ではROCOのなべトロを使った砂利の積み下ろしができるよう,ホッパーと,独製品を参考に作った転倒装置を組み込んでみました.
レンガの建物の手前にあるのが転倒装置です。なべトロはロコの製品で、なべを支えるポッチを落として転倒できるようにしています。ただし車体が軽すぎるので頻繁に脱線します.Oナローでやれば動作も安定して面白いのではないかということで同様のしかけをつくってみました.
【Oナローの転倒装置】
なべトロはアルモデルの製品を使います。フレームはチャンネル材(コの字型)になっているので、その部分を挟み込む構造にすれば同様な転倒装置が作れます。
プラ板と真鍮線でつくりました。右から進入する仕様です。フレームを支える部分はプラバン、転倒と戻しのためのガイドは1ミリの真鍮線です。PECOのO-16.5用の線路を通すような設計になっています。
手書きの図面がありますので設計の参考にどうぞ。
波板の屋根を載せて完成しました。
トロッコのフレームを挟み込むガイドが両側にあるのがわかります。
倉庫に付着した形にしました。
写真には写っていませんが、積み荷は粗めのバラストなどを使いました。
6輌ほどをつなげて推進させて転倒の様子を眺めるのは楽しいものです。ただし、機関車は転倒装置に進入できないので、なべをすべて転倒させるには間に平トロを一両入れます。
2009年の夏のコンベンションでは手回し発電機を使った往復運転のかたちで展示しました。
実際のバラストの積み下ろしを実現するためには積み込み用のホッパーが必要です。
これが同時に製作した実動のホッパー棟です。これについては別の機会に述べるつもりですがこちらで簡単に触れています。https://karatcreek.blog.ss-blog.jp/2018-11-08 (Polaの鉱山用ストラクチャーキット)
実際にバラストの積み下ろしは、バラストが飛び散る上、ホッパー側の積み込みが結構大変です。からナベの転倒だけを眺めるというのも楽しみ方のひとつと言えます。
広すぎる日本の住宅が情景付きレイアウトの進展を遅らせた? (日本でHOのストラクチャーなどのレイアウト用品が充実しなかったわけ) [model railway]
日本型Nスケールのレイアウト用品の充実ぶりには目を見張るものがあります。買ってきてそのまま使えるストラクチャーや手軽なキットも充実しています。一方のHO/16番では日本型はまだ限られており、ストラクチャーキットも手軽なプラモデルのようなものは殆どありません。HOの情景付きレイアウトを作る場合、ストラクチャーは手間を要する上級者向けキットを利用するか自作を覚悟する必要があります。ところで欧米を見渡すとHOとNを比較した場合、HOの方がレイアウト用ストラクチャーなどは古くから充実していて手軽にシーナリーをまとめることができます。
その理由として日本は住宅が狭いので、Nゲージの普及によってようやくシーナリー付レイアウト製作が定着したのだとよく言われ、私もそうだと思ってきました。しかし、最近古い冊子を広げながら小中学生のころを思い出し、全く逆の要因かもしれないと思うようになりました。つまり、日本のかつての和風住宅は広すぎて!HOサイズのシーナリー付レイアウトの発展が遅れたということです。
小学生の頃、3線式OゲージEB10を組線路のエンドレスで走らせたのは6畳間でした。しかし縁側と8畳間につながっていて昼間は開放されているので、広々とした空間で寝そべって走行を眺めることができました。畳は田んぼや畑、その縁はあぜ道に見えてくるので十分に情景が想像できました。中学に入って洋式の家に越してからはHOに移行しましたが、スケールが小さくなったとはいえ線路を敷くスペースは限られてしまいました。近所にHOをやっている友人がいて、そちらのお宅に数人で集まることがたまにありました。8畳と続きの6畳の和室があり、昼間は家族がいないということもあってそこに組線路をつなげて走らせたことが思い出されます。いわゆる“お座敷運転”です。まだ物が少なかった時代、畳の部屋での生活は布団をあげ、和机や座布団を隅に追いやると広々とした空間が確保できました。
一方の欧州では、本線車輛は日本の国鉄型より長く、しかも低床式ホームのため、床下がカバーに覆われている車輛が多いです。これをHOで走らせるためには広いスペースが必要ですが、洋式の部屋はドアで仕切られていて、絨毯の上にソファやテーブルが置かれた部屋ではそれらを簡単に片づけるわけにもいかず、床面での運転は制限されてしまいます。入門セットにはクリスマスツリーの下、家族で走らせているような写真もありますが、手狭な印象を受けます。そこでちゃんと走らせるならテーブル上ということになります。
机上の限られたスペースでは車輛を短くし、車体の裾を分割してカプラーを台車マウントにし、急カーブを走行できるようにする工夫が避けて通れません。それに土足の生活では床に寝そべるのも衛生面で畳敷きの和室とはわけが違います。机上で楽しむ以上、シーナリーのあるレイアウトが発展し、ストラクチャーキットなども早くから充実してきたことがわかります。
それに反して日本の伝統的な家屋構造はどうでしょうか?畳部屋を横断して使える開放的な空間、畳に寝そべって楽しめる衛生環境もあり、HO/16番で車輛をディフォルメしなくても長い編成が緩いカーブで楽しめる環境が整っていました。それに畳は枯山水のように情景を想像させるような抽象化された空間を提供してくれます。繰り返しパターン模様の絨毯が敷かれた部屋ではそうはいきません。こんな恵まれた環境の日本家屋では16番での机上の固定レイアウトのためにあえて走行車輛のサイズに制限やディフォルメを加える必要性もなく、組線路やセクションを利用してストラクチャー類は想像で補うお座敷運転が中心となったということだと思われます。このことが車輛面でも今日まで急カーブに対応していない設計であることにつながっています。
これは手元にある昭和30年代の雑誌記事を集めた特集号ですが、このなかでも“お座敷運転”が取り上げられています。
これらの記事によると、8畳、6畳3畳の続き、6畳と廊下のスペースが通常の住宅で使えるスペースであるようなことが書かれています。このような環境から6畳間占有を前提にした組み立て式レイアウトならサークル仲間の自宅で持ち回りできるとも書かれています。都市部でのアパート暮らしでは無理だったかもしれませんが、郊外でふつうに望める住宅環境だったということでしょう。二間ぶち抜き、フルフラットな接続空間が確保できるのが和式の利点だったわけです。
しかし日本の生活様式も洋式の目的別のドアで仕切られた部屋での暮らしに徐々に変化していき、やがて鉄道模型は机上に追いやられることになりました。そして狭いスペースでも楽しめるNゲージが本格化しました。そのタイミングでシーナリーレイアウトの製作が普及し、製品も充実しました。
私の経験を通しても和室で3線式Oゲージの組線路を楽しんだ思い出があるものの、中学で転居して洋室の個室を与えられたとき、もはやHOの線路を回す余裕はありませんでした。ドイツ製のHOのストラクチャープラキットは好きだったのでいくつか組みましたが、鉄道模型とは別に眺めて楽しんでいました。大学生になって固定レイアウトに着手したのはNゲージで、ストラクチャーはやはりドイツ製品と自作で賄いました。グリーンマックスの詰所のプラキットがでてきたのはそのあとの話です。そのレイアウトのことはこちらにあります:
https://karatcreek.blog.ss-blog.jp/2017-05-15 (最初のレイアウト:松ヶ崎開発鉄道)
今住んでいる家も洋風なもので床面に寝そべって走行を楽しむ場所はなく、90x120㎝のテーブルで展開できる範囲でストラクチャーを組んで、並べて楽しんでいる状況です。いまさら言うまでもありませんが、ナローゲージならOスケールでもシーナリー付レイアウトが手軽に楽しめますよ!
奥岳線の半円線路パネル:B3判、半径225㎜ [O-16.5mm layout]
シーナリーを並べるだけの運転盤の話です。普段机上に置いてあるのは奥岳線(置くだけ)と呼んでいるフラットパネルの組み合わせです。あたらしくB3判のパネルを用意しました。
HO-9mmは小半径の組線路が揃っているのでいいのですが、O-16.5㎜には同様の製品がないので、固定のものを用意しているわけです。基本にしているのが半円の線路パネルです。半円のメリットは間にパネルをはさんでエンドレスを延ばせる拡張性を保ちつつ簡単に設置できることにあります。
3種類の半円パネルを並べています。半円といっても接続側は一部直線になっています。写真中央にあるのはB4パネルの半径150㎜、右側はA2パネルの半径250㎜です。半径250㎜のパネルは組み立て式(木尾根坂線)のものとプランは同じですが別に用意してあります。そして左側が新しく準備した地面未加工のB3パネルの半径225㎜です。
寸法を示す図です。左上にA3パネルはプランだけで製作はしていません。半径150㎜はトロッコ車輛を走らせるのには十分で、場所もとらないので重宝します。しかし軽便鉄道となると厳しいので半径250mmを別に用意してきました。ただしこちらは常設には少し大きいので邪魔な時は片づけています。おもに運転会出動用です。250mmでも一般的には小カーブの部類になりますが、Cタンクやボギー車輛も対応できるものを中心に選べば十分です。250㎜となったのはA2判の大きさによる制限には違いないのですが、線路をパネルの縁にぎりぎりまで寄せても風情がないと考え線路中心は縁から47㎜離れています。
しかしこのことは接続する分岐(ポイント)を半円の間にはさみ、分岐を外側に向けた場合、側線をはめる余裕がないので斜めにカットしたパネルで対処してきました。変則的なほうが風景的には変化があっていいのですが、パネル接続の融通性は失われます。
A2判の組み合わせでも室内のテーブル上に収まるものの占有されてしまうので、この度少し小型化したB3判のパネルの利用を検討しました。B3パネルの縁から線路中心までの距離を32㎜として半径225㎜の半円線路を敷きました。
これがB3パネル2枚を接続した状態です。小型のCタンクやボギー車も扱えそうな大きさです。
そして長さ方向がB判とおなじ364㎜(幅は128.5mm)のパネルの中央にYポイントを取り付け、幅69.5㎜の平行分岐を促す配置をつくりました。これで分岐はどちら方向にも使え、外側にむけて平行なパネル接続が可能になります。
PECOのOナロー用ポイントは通電フログで分岐方向内側レールの極性が変わるので、自由な接続ができるように分岐レバーは6p(2回路)スライドスイッチを使って分岐側の通電を切り替えています。
ポイントパネル裏側の配線です。
これは一つを内側への分岐にした接続です。内側分岐はコンパクトな点がいいのですが、汎用パネルとして使いたい場合は分岐側線の固定(右側のパネルに延長した内側の線路)をどうするかが課題です。
これは2本の分岐を何れも外側に分岐した場合で持ち出しの展示などで便利な配置です。
90㎝x120㎝が模型用の常設テーブルです。B3パネル3枚分でも手前を作業スペースとする余裕が十分あります。当面この新作の奥岳線が机上に置かれることになりそうです。他のパネル同様に重ねても影響のない範囲で地面は仕上げます。簡単な地面の仕上げは敷く、塗る、撒くのどれにするかこれから考えますが、たぶんこれらの併用になる見込みです。
大きさが多少異なるだけで代わり映えのしない運転盤ですが、ミニカーやストラクチャー類を並べてみるだけで情景が浮かび、車輛工作に着手する気力が湧いてくるのが不思議です。ただし組立未着手のままの2台のクライマックスはこのカーブは無理です。