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あるものはつくらない? モデリング・クラフト・アート [model railway]

夏の鉄道模型コンベンションのあとの宴会で,調子にのって鉄道模型にはモデリング,クラフト,アートの三つの方向性があるなどとぶちまけてしまいました.これらの三つの言葉には幅広い意味や使われ方があるので,言葉の定義をするつもりはありません.以下の方向性を意味するキーワードとして大雑把に受け取ってもらえればうれしいです.日本語にすれば,模型,工作,芸術の関連ということになります.

【モデリング/模型趣味】

よくモデラー同士の励ましの言葉として“ないものは作れ”というのがありますが,裏返せば“あるものは作らない”というのがモデリング趣味の本質ではないかと思います.わたしは子供のころからプラモデルに親しんできました.しかし,模型工作を経験した大人たちからは随分とバカにされたのを思い出します.“設計図に基づいて木を削って作り上げてこそ模型工作”であり,ばらばらに成型されたものを組み上げるだけで何が工作なのか,というわけです.確かに子供のころは塗装するすべもなく,バリとりと接着剤がはみ出ないようにていねいに組むこと以外,特段にスキルを発揮するものでもなかったので,この言葉に対しては反論する余地がありませんでした.つまり,模型趣味というのは工作趣味とはちょっと違うのだということをこの時思い知らされたのです.

さて鉄道模型です.鉄道模型(ここでは車輛模型のこと)にはスクラッチ(手作り)を目指したい側面がかなりあります.しかし,これはたまたま古い鉄道車輌が3次元的造形ではなく平板の曲げ加工であることから作りやすいということがあるからだと思います.一方で優れたキットが増えてくればなるべくこれらを使って,必要ならさらに手を加えるというのが多くの楽しみ方になってきます.また,部品の活用ということになると情報収集も必要となります.そしてキットやパーツが増えていくと,あえて手作りという領域はどんどん狭められていき,工作こそモデリングの本質だと考える人は新たに題材を探すかフリーランスという方向に向かうことになります.ナローゲージモデルはその受け皿の一つであると言えるでしょう.しかしさらに3Dプリント,レーザーカットという道具が活用されていくのはモデリング趣味の宿命であり,3Dプリントとなると工作趣味というより設計趣味ということになるでしょう.

【クラフト・工作】

何年か前に“親子で楽しめる鉄道模型工作教室”を開催してくれないかと頼まれたことがありました.一見簡単にできそうですが,はたと考えました.工作とは何か? Nゲージの存在も十分知っている目の肥えた子供たちがペーパークラフトで満足するとは到底思えません.ペーパークラフトを楽しもうなどと考えるのはむしろ大人の方です.こうなるとNゲージの基本セットの活用などを念頭に置く必要が出てきて費用も派生しますが,どこに工作すべきところがあるのかと考えてしまいます.それでこの件は自分としては対応できないので断ったのですが,翌年工作にちなむものを是非と頼まれ,考えた末”ミニチュアハウスをつくる“という3回にわけた大人向けの公開講座をやることにしたのです.

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これはOスケールの小さな家を発泡スチレンシートでつくり,樹木のあるジオラマにしたてるというものです.型紙と素材を用意し,いくつかの基本プランの中から好きなものを選んで製作してもらうもので15名ほどの受講者がいました.この内容については別の機会に譲ることにしますが,ここで考えたのはクラフト教室的なアプローチとは何かということです.ご存知のようにドールハウスという分野があります.もちろん様々なアプローチがありますが,多くの場合,手作りを楽しむもので,その素材は一般的な材料である木材,紙,布,粘土を活用することになります.つまり,果物を盛ったお皿であれば皿と果物の成型パーツを買ってくるのではなく粘土等で作るわけです.このような”素材を活用する“方向性をここではクラフトと呼ぶことにします.例えば鉄道模型で欧米風の家を作りたければ窓枠にグラントラインのパーツを使えばOKなわけですが,クラフト(工作)となればそうはいかず自作の対象となります.窓枠の工作は結構難しいので,クラフト紙に窓枠をプリントしたものを配布し,切り抜いてもらうことにしました.建物に添える樹木も鉄道模型的には簡単にウッドランドシーニックスの製品で済ませたいところですが,クラフトとしては納得いかないでしょう.そこで100円ショップの箒をつぶしてそれを造花用のクラフトテープで巻いて幹をつくる方法を考案しました.しかし葉の部分を手っ取り早く実感的にといってもアイデアが浮かばす,この講座では唯一鉄道模型用品であるウッドランドシーニックス(KATO扱い)のフォリッジを小分けして配布することにしたのです.このようにクラフト趣味は一般流通している素材をいかに活用するかが課題であり,モデリングとは異なる傾向の趣味だということを再認識しました.最近では鉄道模型のイベントで,カルチャースクール系の人がクラフト指向で参加されており,今までの鉄道模型趣味とは模型製作のアプローチが異なっている点が興味深いです.

【アート/芸術作品】

アートについてはあえてここで語ることはないと思います.いずれにせよ,何をどのように表現したいかが主張できている作品はアートといえるので,鉄道模型の作品がアートであることは間違いありません.よく“ロストワックスパーツてんこ盛りはいかがなものか?”などと言われますが,これは鉄道模型においてはディテール追及がすべてではなく,模型として表現したいものを取捨選択することが重要である,ということを表す言葉だと思います.

もう一つ大事なことは,鉄道模型趣味はアートとしてすぐれている作品を残すことが目標ではないということです.つまり鉄道模型は作って,触って,走らせてなんぼという世界であって,最終的な作品としての価値は二の次だと思うからです.



以上,当たり前のことを振り返ったに過ぎませんが,鉄道模型というのはテクノロジーとともに進化する宿命にあるものの,やはり工作が本質にあることを忘れずに,ディテールがすべてではなくバランスよく作り上げることを目指す,というモデリング,クラフト,アートの3要素を合わせ持つ楽しみだということが言えそうです.

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