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広すぎる日本の住宅が情景付きレイアウトの進展を遅らせた? (日本でHOのストラクチャーなどのレイアウト用品が充実しなかったわけ) [model railway]

 日本型Nスケールのレイアウト用品の充実ぶりには目を見張るものがあります。買ってきてそのまま使えるストラクチャーや手軽なキットも充実しています。一方のHO/16番では日本型はまだ限られており、ストラクチャーキットも手軽なプラモデルのようなものは殆どありません。HOの情景付きレイアウトを作る場合、ストラクチャーは手間を要する上級者向けキットを利用するか自作を覚悟する必要があります。ところで欧米を見渡すとHOとNを比較した場合、HOの方がレイアウト用ストラクチャーなどは古くから充実していて手軽にシーナリーをまとめることができます。
 その理由として日本は住宅が狭いので、Nゲージの普及によってようやくシーナリー付レイアウト製作が定着したのだとよく言われ、私もそうだと思ってきました。しかし、最近古い冊子を広げながら小中学生のころを思い出し、全く逆の要因かもしれないと思うようになりました。つまり、日本のかつての和風住宅は広すぎて!HOサイズのシーナリー付レイアウトの発展が遅れたということです。
 小学生の頃、3線式OゲージEB10を組線路のエンドレスで走らせたのは6畳間でした。しかし縁側と8畳間につながっていて昼間は開放されているので、広々とした空間で寝そべって走行を眺めることができました。畳は田んぼや畑、その縁はあぜ道に見えてくるので十分に情景が想像できました。中学に入って洋式の家に越してからはHOに移行しましたが、スケールが小さくなったとはいえ線路を敷くスペースは限られてしまいました。近所にHOをやっている友人がいて、そちらのお宅に数人で集まることがたまにありました。8畳と続きの6畳の和室があり、昼間は家族がいないということもあってそこに組線路をつなげて走らせたことが思い出されます。いわゆる“お座敷運転”です。まだ物が少なかった時代、畳の部屋での生活は布団をあげ、和机や座布団を隅に追いやると広々とした空間が確保できました。
 一方の欧州では、本線車輛は日本の国鉄型より長く、しかも低床式ホームのため、床下がカバーに覆われている車輛が多いです。これをHOで走らせるためには広いスペースが必要ですが、洋式の部屋はドアで仕切られていて、絨毯の上にソファやテーブルが置かれた部屋ではそれらを簡単に片づけるわけにもいかず、床面での運転は制限されてしまいます。入門セットにはクリスマスツリーの下、家族で走らせているような写真もありますが、手狭な印象を受けます。そこでちゃんと走らせるならテーブル上ということになります。
机上の限られたスペースでは車輛を短くし、車体の裾を分割してカプラーを台車マウントにし、急カーブを走行できるようにする工夫が避けて通れません。それに土足の生活では床に寝そべるのも衛生面で畳敷きの和室とはわけが違います。机上で楽しむ以上、シーナリーのあるレイアウトが発展し、ストラクチャーキットなども早くから充実してきたことがわかります。
 それに反して日本の伝統的な家屋構造はどうでしょうか?畳部屋を横断して使える開放的な空間、畳に寝そべって楽しめる衛生環境もあり、HO/16番で車輛をディフォルメしなくても長い編成が緩いカーブで楽しめる環境が整っていました。それに畳は枯山水のように情景を想像させるような抽象化された空間を提供してくれます。繰り返しパターン模様の絨毯が敷かれた部屋ではそうはいきません。こんな恵まれた環境の日本家屋では16番での机上の固定レイアウトのためにあえて走行車輛のサイズに制限やディフォルメを加える必要性もなく、組線路やセクションを利用してストラクチャー類は想像で補うお座敷運転が中心となったということだと思われます。このことが車輛面でも今日まで急カーブに対応していない設計であることにつながっています。
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これは手元にある昭和30年代の雑誌記事を集めた特集号ですが、このなかでも“お座敷運転”が取り上げられています。
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 これらの記事によると、8畳、6畳3畳の続き、6畳と廊下のスペースが通常の住宅で使えるスペースであるようなことが書かれています。このような環境から6畳間占有を前提にした組み立て式レイアウトならサークル仲間の自宅で持ち回りできるとも書かれています。都市部でのアパート暮らしでは無理だったかもしれませんが、郊外でふつうに望める住宅環境だったということでしょう。二間ぶち抜き、フルフラットな接続空間が確保できるのが和式の利点だったわけです。
 しかし日本の生活様式も洋式の目的別のドアで仕切られた部屋での暮らしに徐々に変化していき、やがて鉄道模型は机上に追いやられることになりました。そして狭いスペースでも楽しめるNゲージが本格化しました。そのタイミングでシーナリーレイアウトの製作が普及し、製品も充実しました。
 私の経験を通しても和室で3線式Oゲージの組線路を楽しんだ思い出があるものの、中学で転居して洋室の個室を与えられたとき、もはやHOの線路を回す余裕はありませんでした。ドイツ製のHOのストラクチャープラキットは好きだったのでいくつか組みましたが、鉄道模型とは別に眺めて楽しんでいました。大学生になって固定レイアウトに着手したのはNゲージで、ストラクチャーはやはりドイツ製品と自作で賄いました。グリーンマックスの詰所のプラキットがでてきたのはそのあとの話です。そのレイアウトのことはこちらにあります:
https://karatcreek.blog.ss-blog.jp/2017-05-15 (最初のレイアウト:松ヶ崎開発鉄道)
 今住んでいる家も洋風なもので床面に寝そべって走行を楽しむ場所はなく、90x120㎝のテーブルで展開できる範囲でストラクチャーを組んで、並べて楽しんでいる状況です。いまさら言うまでもありませんが、ナローゲージならOスケールでもシーナリー付レイアウトが手軽に楽しめますよ!


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